「病は気から」という言葉が昔からあります。

僕もこの考えには肯定的な立場です。というのも、日常的に強いストレスを感じている方ほど体調を崩しやすい、あるいは太りやすいという僕なりの統計があるからです。

思い当たる方も多いかと思います。職場に嫌いな同僚や上司がいる、残業時間が長い、いつも知人の愚痴を聞かされる、旦那が協力的じゃない、などストレスの原因は様々ですが、このような生活を続けていると、体調に異変が起こりやすくなるのです。中には、激務から解放され、休暇に入った瞬間に体調が悪くなってしまう方も多いですね。これは緊張の糸が解けることが原因なのでしょうが、それだけ肉体と精神が密接に関わっていることの顕れでもあります。

僕が思うのは、日本人は「ストレスマネージメントが苦手」だということ。ストレスマネージメントというのは、自分でストレスをマネージ(管理)することです。休養の手段と言えば、休日はソファでゴロゴロしたり、遅くまで寝て過ごすということが挙げられると思います。そして、また月曜日を迎えるわけですが、なぜか疲れが抜けないはずです。しっかり休んだはずなのに、むしろ体が重くなっていることってあると思うんですね。

これは疲労の正体が、肉体ではなく精神から来るものだからです。精神的な疲れというのは、ゴロゴロしたり、遅くまで寝たりしてもなかなか抜けないのです。

では、どうすれば良いかというと「運動」の出番です。

「疲れてるのに運動なんて冗談じゃない」と普通は考えますが、そこが盲点なのです。例えば、こんな経験があるかと思います。連日の激務で疲れていたはずが、少しジムで運動したらスッキリした。あるいは、少し遠回りして、いつもと違う道で帰ったら気分転換になったなど。頭の中がスッキリする感覚を感じた経験があるかと思います。

ハーバード大学医学部臨床精神医学准教授のジョンJ.レイティ氏が、興味深いことを述べています。

運動すると気分がすっきりすることは誰でも知っている。けれども、なぜそうなるかわかっている人はほとんどいない。ストレスが解消されるから、筋肉の緊張が柔らぐから、あるいは、脳内物質のエンドルフィンが増えるから。たいていの人はそんなふうに考えている。

でも本当は、運動で爽快な気分になるのは、心臓から血液がさかんに送り出され、脳がベストの状態になるからなのだ。わたしに言わせれば、運動が脳にもたらすそのような効果は、体への効果よりはるかに重要で、魅力的だ。筋肉や心肺機能を高めることは、むしろ運動の副次的な効果にすぎない。

わたしはよく患者に、運動をするのは、脳を育ててよい状態に保つためだと話している。

(ジョン J. レイティ著「脳を鍛えるには運動しかない!」, NHK出版, 2009年, p8)

 

注目すべきは「筋肉や心肺機能を高めることは、運動の副次的な効果にすぎない」という部分。単に運動というと、筋肉や心肺機能を高めること、あるいは、ダイエットや綺麗な体型をつくることのイメージが強いですが、そういったものはあくまで運動の副次的な効果に過ぎないということです。

言ってしまえば「おまけ」みたいなものです。それよりも、運動をすることで様々な悩みやストレスから解放され、脳がフレッシュな状態となり、ポジティブな思考になりやすくなる。そうした恩恵のほうが遥かに価値があるということです。

「とても運動できるような精神状態じゃない」ということもあるかと思います。ただ、運動というと、ジムに行くことや外でジョギングするイメージがあるかと思いますが、もっと幅広く考えてみることです。散歩や買い物、料理、ポケモンGOだって立派な運動です。狭い考え方や形式に縛られないことが重要であり、運動のスタイルは自分で決めればいいわけです。

寝転がって一生懸命頭の中を動かしても、なかなか悩みは解決しません。それどころか「思い出し怒り」のような感情すら湧いてくることもあります。

重要なのは「頭ではなく、体を動かすこと」です。その結果として、ストレスが緩和され、より運動らしい運動に繋がっていく。このサイクルを円滑に回すことが、健康、そして綺麗な体をつくる上で非常に重要なのです。

「気付いたら痩せてた」くらいがちょうどいい