「自分の仕事に他人を関わらせない」

突然なにを言い出すんだ、と感じさせてしまうかもしれませんが、これが僕の仕事に対する基本スタンスです。

というのも、昔から「自分の代わりはいない」という心構えで仕事に臨んでいるためです。これは個人で活動しているから仕事を休めないという意味ではなく「自分にしかできない仕事をしている」という意味です。

仕事の本質は「自分が欲しいもの」を売ること

パーソナルトレーニングをはじめ多くのサービス業は、まずお客様のニーズを聞き出し、それに応える形でサービスを提供することで成り立っています。僕も基本的にはそうしたスタンスではありますが、あくまで「ある程度は」です。

というのも、商売の本質は 「自分が欲しいものを売ること」だと考えているからです。「え、お客様が欲しいものを売ることじゃないの?」と思われがちですが、もちろんそうではありますが、それ以前にまずは自分が欲しいものを売ることこそが商売の本質だと考えています。これは当たり前のことで、自分が欲しくもないものを売ることは少し違うと思うんです。自分が売る商品やサービスに自信や誇り、愛着を持てるからこそ良い商売ができるものだと考えています。

ラーメン屋もそうだと思います。「うちのスープが一番に決まってる」「チャーシューならどこにも負けねぇ」という誇りを持っていると思うんですね。僕が客の立場だったら、自分の店の味が大して好きでもない、あるいはよそのラーメン屋のほうが美味しいと思っている店員よりも、自分の店のラーメンが好きで好きで堪らない店員がつくるラーメンを食べたいんです。

僕は、自分が求める価値観に共鳴した”一部の人”にだけに商品が売れれば良いと思ってます。万人ウケなど狙っていたら「ここはなにラーメンのお店なの?」ということになりかねませんから。思想も理念もグラグラというものです。僕の場合は女性相手の商売になりますから「もし自分が女性だったらこうなりたい」という観点でサービスを提供しています。

同様の理由で、こちらのホームページもすべて自分で「ゼロから」作り上げています。自分の好きなデザインにしたいですし、世界観を守りたいからです。

「自分が好きな商品を売るなんて当たり前でしょう」と思われがちですが、実際にはこれができずにストレスを抱えている人も結構多いようです。世の中には「流行り廃り」がありますから、業種や業態によってはその波に乗らざるを得ないこともあるかと思います。

私はそうした「波」にはほとんど興味がないので、あくまで自分のスタイルを貫くことだけを考えています。自分のスタイルを曲げなければならない時は、僕がこの仕事を辞める時でしょう。そこまでしてこの仕事をしたいと思いませんから。そのくらいの覚悟でやっています。

近頃はパーソナルトレーニングも「3ヶ月で肉体改造」のように、高額なお金を支払って、短期間で体を変えることが主流となっていますが、僕はそういうのはやりません。理由はいくつかありますが、何十年も運動してなかった人が短期間で痩せようと思えば、肉体のみならず精神に相当な負担がかかるからです。食べたいものを食べれない、仕事に集中できない、体は痩せたけど心は幸せじゃない。そうした方々と数え切れないほどお会いしてきたからこそ言えることです。

ダイエットとは健康になること。運動は期間限定でおこなえば良いものではなく、この先の長い人生ずっと付き合っていかなければならないものです。だからこそストレスになってはいけないし、ストレスに感じるようであればそれはダイエットではないのです。

まずそもそも、僕がそういうトレーニングの仕方に興味がないというのが一番の理由です。資格勉強にしても「3ヶ月で合格!」的なものもあれば、「基礎からみっちり学ぶ」的なものがあると思います。僕は迷わず後者を選びます。というのも、ただ合格することだけが目的なのであれば前者を選ぶべきでしょうけど、そういう勉強の仕方は、あまり知識として定着しないし、記憶にも残りづらいからです。逆に、時間はかかるけれど基礎からきちんと学べば、原理や理論背景、成り立ちなどが理解できるし、興味も沸きやすいし、知識を応用しやすくもなります。

これも「自分が欲しいものを売ること」がベースとなっています。自分がお客様の立場だったら、間違いなくそういうものを求めるからです。

企業からの依頼を徹底的に断り続ける理由

長々と話してきましたが、ここからが本題です。僕が雑誌掲載や番組出演の依頼をお断りしている理由についてお話します。

真実を語ろうとしたら企画倒れとなった雑誌掲載について

以前、とある出版社から「夏までに脚を細くするトレーニング特集」という枠の監修をしてほしいとの依頼をいただきました。

当時はまだ若かったので「やった!雑誌に載れる!」なんて喜んだものですが、その喜びも束の間のこと。僕は、部分痩せ否定派の人間なので「脚だけを細くするトレーニングというのはなく、バランスの良い全身トレーニングと食事の見直し、有酸素運動が…」的なことをお伝えしたら、なんとも言えない微妙な空気となってしまった。結局、その企画はなくなってしまい、代わりに「夏までに痩せるダイエット法」的な内容に変更されたのです。

それでどうしたのかと言うと、断りました。夏までに3ヶ月くらいあるならまだしも、もう夏目前だったので「今からはじめても遅いでしょう」と素直に思ったからです。自分の仕事に嘘をついてまでメディアに出演したいと思いませんし、そもそも自分が雑誌を読まないので、それも「自分が欲しいものを売る」というポリシーから外れるわけですよね。そういう安直なダイエット法は、僕の性というかテイストに合わないんです。

詳しいことは知りませんが、番組や雑誌というのはまず企業側がテーマを決めて、そこから監修してくれるトレーナーを探すという流れなんだと思います。だから、嫌でもそのトレーナーは内容に沿ったトレーニングを考えなければならないわけです。これってトレーナー発信の情報ではなく、あくまで企業発信の情報なんですよね。

個人が自由に情報発信できる時代なので、僕は自分の声が歪みなくダイレクトに伝わるブログやSNSを利用していくという結論に至りました。

一向にギャラが支払われない番組出演について

とある、大手企業の番組に出演した時のことです。

「女性向けのダイエット特集」という内容で、放送の1ヶ月くらい前に依頼をいただきました。先ほどの雑誌の例とは異なり、こちらは僕がある程度その内容を自由に決められるとのことで引き受けることにしました。

収録は無事に終わり、知人からも「番組見たよ!」という声をいただいたのですがその後の対応がマズかった。出演料を頂くことになっていたのですが一向に連絡が来ないんです。おかしいなと思い、こちらから連絡をしてもまったく返事がない。結局、もう7年くらいそのままになっているわけですが、一生支払われることはないでしょう。

正直、出演料はどうでもいいわけです。それよりも、こちらが準備に1ヶ月の時間と労力を費やしたこと対して、その後まったく連絡がないというのは常識としてあり得ないなと。もちろんすべての企業がこの例に当てはまるわけではないでしょうが、自分の仕事を侮辱されたと感じますし、もう色々と面倒になってしまったので、それ以来、番組の出演もすべてお断りしています。(プロフィール欄に記載している企業様のことではありません)

インフルエンサーに忍び寄る成果報酬型の企業案件について

最後にもう一つだけ。

僕のところには毎日のように「企業案件」の連絡が来ます。企業案件というのは、その企業の商品やサービスをPRする代わりに商品提供を受けたり、売り上げに応じて報酬が支払われる仕組み(成果報酬型)のことです。

「このプロテインがオススメ」「このサプリを飲めば痩せる」「このスパッツを履けば美脚になれる」「この豊胸ブラを身につければ巨乳が手に入る」といった文言を、YouTubeやInstagram、Twitterなどで、インフルエンサーと呼ばれる方々が発信しているのを目にしたことのある方も多いかと思います。成果報酬型なので、売り上げに応じてその企業やインフルエンサーには収益が発生します。そして、購入者は提示された「紹介コード」や「商品コード」を入力することで、その商品を割引価格で購入できるというメリットがあります。

これ、僕は昔から違和感があるんです。その商品が怪しいとか胡散臭いとか、もちろんそういうのもあるんですが、問題はそこじゃない。その商品ってあくまで企業が売りたいと思っている商品なわけですよね。もちろん、インフルエンサー本人が、その商品を心の底から魅力的だと感じたからこそ紹介しているケースもあるかと思いますが、少なくとも僕はそうは感じない。「お金の匂い」がするからです。しかも、企業から「タダ」で商品提供を受けているインフルエンサーとしては、デメリットなんか伝えられないわけです。

僕が一番悲しいと感じるのは、長い年月を費やし、地道に努力を重ねて綺麗なスタイルをつくり上げてきた女性が「この商品でスタイルをキープしています!」的な発信をはじめてしまうケース。「あぁ… 手を出しちゃったか」と思いますね。

企業としては少しでも利益を上げたいわけですから「フォロワー数の多い人(インフルエンサー)」が標的にされます。僕のインスタグラムもフォロワーが1万人ほどいますので、毎日のように企業案件の連絡が来るわけです。僕も自身のSNSで商品を紹介することはありますが、それは自分の努力で見つけ、自分が本当に良いと感じたものだけです。間違っても企業側から提案された商品ではないということ。信用を築くのには時間がかかりますが、崩れるのは一瞬だからです。

こうした事実があることを知らない人からすれば「あの人みたいに綺麗なスタイルになりたい!」と勘違いしがちですが、冷静に考えるとそのスタイルは地道な努力によって作られたわけであり、その商品によって得られたわけではないですよね。

僕の分類では、購入者は大きく3つのタイプに分かれます。

「〇〇さんも使ってるから買ってみよう」と鼻から信じ込んでしまっているタイプ
・「これって本当に効くのかな?」と半信半疑なタイプ
・「あんなの絶対ウソでしょ」と嗅覚抜群なタイプ

言うまでもなく僕は3番目のタイプ。常連のお客様も同じタイプの方がほとんど。お互いの時間とお金を無駄にしたいためにもお伝えしますが、1番目と2番目のタイプの方は、僕と相性が合わないので去っていくケースがほとんどです。

自分が本当に苦労して見つけた知識や情報だからこそ価値があるのであって、そうしたものが安売りされることってまずないんですよね。

最後にお伝えしたいこと

僕が身を置いているのは、トレーナー業界でもフィットネス業界でも美容業界でもありません。

一応「トレーナー」という肩書きですが、それはあくまで「自分自身を鍛える」あるいは「お客様が自立できるように支援する」という意味が込められています。トレーナーは対岸から「おいでおいで!」と手招きするような存在ではなく、むしろ同じ船に乗り込み、同じ苦労を共にし、同じ進路に向かって進むチームリーダーのような存在です。

だからこそ、今回ご紹介したような「ノイズ(荒波)」に飲み込まれないよう、鋭いセンサーを持ち続ける必要があるのです。

傍から見れば、かなりの”捻くれ者”ではありますが「美を磨くこと」「体を成長させること」に関しては一途なので、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

浅野